かぼちゃフェスタ報告書②

【報告書賞】昭和保育園

 
①種まき時の子どもの様子 ・ 先生の感想など
 
「八瀬の魔女さんからかぼちゃの種が届いたよ」
と言うと、
「やった一育てたい」
「どんなかぼちゃができるんかなぁ」
「魔法のかぼちやかもよ」
と子ども達。
 
前もって、芽が出やすいように水につけておいた種を、4月11日に小さい植木ポットに、1粒ずつまきました。
 
種を植える子どもたち
 
送っていただいた種をよく見てみると、ペチャンコだったり、小さかったりしたのが多かったので、子どもたちと種まきをしたものの、正直芽が出てくれるのかとても心配でした。
 
「早く芽が出ないかなぁ」
「今日は芽が出てるといいなぁ」
と、言いながら毎日子ども達と水やりをしていました。
 
水やりをする子どもたち
 
4月22日芽が出ているのを発見。
その日は土曜日で登園している子が少なく、代わりに保育士が水やりをしていて見つけたのですが、子ども達に発見して欲しいと思い、保育士が土曜日に発見したことは内緒にしていた所、24日月曜日、水やりをしていた子ども達が、
 
「先生、かぼちゃの芽が出てる一」
「すごーい」
「来て来て」
 
と発芽したのを発見し、教えてくれました。
このときの芽が、唯一発芽した芽で、あとは残念ながら発芽しませんでした。
 
 
唯一でたかぼちゃの芽
 
芽を見つけた子どもたち
 
 
 
②育てる際の子どもの様子 ことば気づいたこと
 
5月2日大きなプランターに、かぼちゃの苗を植え替えました。
うどん粉病防止になるかもと思い、ビニール袋を使用してマルチもどきを作ってみました。
毎年よりは、うどんこ病が、おさえられた気がしています。
 
植え替えをする様子
 
マルチもどき
 
子どもたちは、毎日どんどん蔓が伸びていく様子を見て、
「昨日より大きくなっているなぁ」
「どこまで大きくなるんかなぁ」
 
雌花を見て
「ここについてるのかぼちゃの赤ちゃん?」
と言ったり、お水をやる時には、
「かぼちゃ、お水美味しいって言ってるかなあ」
など、たくさんの言葉が聞こえてきました。
 
園庭に出ると、まず、かぼちゃを見るというのが、子どもたちの日課になりました。
 
かぼちゃには雄花と雌花をがあり、受粉しないとかぼちゃの実になりませんが、 1つ目と2つ目にできた雌花は、雄花が全く咲いておらず、受粉できませんでした。
こんな時、苗が 1本だけだと不便です。
やっと雄花が咲きはじめたので、  今後できる雌花のために、冷蔵保存しておきました。
6月7日3つ目の雌花に受粉し、次の日、4つ目の雌花に受粉しました。
 
子どもたちは3つ目のかぼちゃに『かぼちゃん』、4つ目のかぼちゃに『かくちゃん』と名前をつけました。
 
花の咲いたかぼちゃん
 
 
 
③実ったかぽちゃを見た子どものことば先生の感想など
 
「かぼちゃん大きくなってきたけど、かくちゃん大きくならへんなぁ」
どうやら4つ目のかぼちゃの受粉には失敗したようで、3つ目のかぼちゃだけを、育てていくことになりました。
 
どんどん大きくなっていくかぼちゃん
しましま模様を発見!
 
子どもたちは毎日見ては
「昨日よりおっきくなってるんちゃう」
「どんだけ大きくなるんやろ」
と言ったり、
「かぼちゃん落ちたらどうする?」
と心配したり。
 
かぼちゃのつるを地面には這わせずに、ネットに這わせるやリ方で育てていたので、重くて落ちてしまわないか心配になったのだと思います。
すずらんテープで手作りハンモックを作ってかぼちゃんをのせてあげ、大切に育てました。
 
7月、恐れていたうどんこ病がちらほら出てきましたが、苦土石灰をかけたりしながら乗り切りました。
いつもの年よりは、うどんこ病を発病する葉っぱは、少なかったように思いました。
唯一実ったかぼちゃなので、カラスに狙われないようにネットを張ったり、実が割れてきしまわないかハラハラしながら育てました。
 
かぼちゃんのハンモック
 
 
 
④かぽちゃを秤に載せて計測している際の子どものことば
 
7月19日かぼちゃを収穫しました。
収穫したかぼちゃを抱えて
 
「かぼちゃん大きくなったなぁ」
「このかぼちゃ、世界一大きいかぼちゃちゃう。なぁ、そうやんなぁ」
「めっちゃ重たいなぁ」
 
と大喜び。
秤にのせて計ると2100g。
保育士も2 kg越えだったので嬉しかったです。
 
秤にかぼちゃんをのせている様子
 
 
 
⑤実ったかぽちゃの活かし方
 
実ったかぼちゃは、子どもたちと話し合った結果、かぼちゃカレーを作ることにしました。
子どもたちの大好きな絵本『ポポくんのかぼちゃカレー』と同じです。
 
8月21日、かぼちゃカレーを作る日の朝に、事件が起こりました。
 
かぼちゃカレーを作る当日まで、事務所の前に飾っていたかぼちゃんが、見当たりません。
何と、 どろぼうがっこうの『くまさかとらえもん先生』に盗まれてしまったのです。
 
かぼちゃのありかは
①くま
②1階でも2階でもないところ。
くまさか先生からのヒント
 
この2つのヒントを手がかりに捜索開始。
他のクラスに行って
「かぼちゃ見ませんでしたか?」
と聞いたり、
「1階でもなくて2階でもないということは、あっ屋上ちゃう」
と推理しながら探したり、
思い当たる所を探し回り、やっと、階段の途中の所に唐草模様の風呂敷に包まれて隠してあるかぼちゃを発見。
かぼちゃを発見
 
無事にカレー作りをすることができました。
子どもたちには、かぼちゃの種をとるお手伝いをしてもらいました。
食べた時の感想は、
「カレー最高!」
「かぼちゃん大成功!!」
「明日かぼちゃの絵描かなあかんなぁ、描きたいなぁ」
などでした。
普段カレーが苦手な子まで、おかわりをしてたくさん食べました。
とっても甘くて、美味しいかぼちゃでした。
かぼちゃの中身をみてみると
 
かぼちゃんの種いっぱい~
 
次の日、勿論、かぼちゃの絵を描きました。
楽しい経験をした後に描く絵は、とても可愛く仕上がりました。かぼちゃんの種を見て、
「また育てたいなぁ」
「もう一回食べたいなぁ」
「植えたら、また、かぼちゃ出来るんちゃう」
と、言っていた子どもたちですが、3月に卒圏してしまうので、お家に持って帰って育てられるように、5粒ずつみんなに持って帰ってもらいました。
それでも、まだ、かぼちゃんの種が残っているので、保育士がかわりに植えて、夏に子どもたちが遊びに来てくれた時に
 
「かぼちゃんの赤ちゃん大きくなったよー!」
と見せてあげられたらと思っています。
 
4月から始まった、かぼちゃ作り。
一粒のかぼちゃの種から、子ども達は、さまざまな楽しい経験をすることが出来ました。
『生命のつながり』まで感じれた貴重な経験だったと思います。
ここまで、保育が広げられたこと、子ども達と一緒に楽しい経験が出来たこと、かぼちゃフェスタに取り組んだからこそできたと、感謝しています。ありがとうございました。
 

かぼちゃカレー美味しいね!
 

かぼちゃの絵
 




 

【報告書賞】上京保育所

 
それはある晴れた日のことでした。
ひかりぐみに進級してひと月が過ぎたころ、運動場から部屋に戻るとOちゃんが何かに気が付きました。
 
「あれもしかしてお手紙じゃない?!」
普段絵本を仕舞っている棚に、見覚えのない巻物状の紙が置いてあります。
 
 
「先生、ちょっと取ってよ。」
と言われるままに担任が手を伸ばすと、ワッと周りに集まる子どもたち。
 
「え~、何だろう」
「ちょっと怖いな 。」
そんな声も聞こえてきます。
 
紐で括られた紙を広げてみると、たくさんの絵が描かれた紙と、6粒の種のようなものが入っていました。
 

 
「これは、魔女さんからの手紙や!」
Sちゃんが言います。
 
実はこれまでも八瀬に住むと言う魔女さんからお手紙を貰っていたひかりぐみさん。
たくさんの絵は、その頭文字をとって解読する暗号なのです。
ー文字ずつみんなで読んでみると
 
『ひかりぐみのみなさま   これはひみつのたねです。
いつかあうときに、どれくらいおおきくなったかおしえてくださいね
あえるのがたのしみです やせのまじょ』
 
「ひみつの種やって!」
なんやろう~?とワクワクした様子。そこに一人の声が響きます。
 
「僕知ってるよ!」
自他共に認める植物博士のSくんでした。
 
「これは見たことある。かぼちゃの種だね。」
え~、本当かな?かぼちゃって種あったっけ?かぼちゃの種やったらもっと大きいんちゃう?でもSくんが言うならそうなんかなあ
 
ちょっとしたざわめきが聞こえてきます。
じゃあみんなで植えてみようか、とひかりぐみが野菜を育てている場所まで行って、空いているプランターに種を植えることにしました。
先に育てていた野菜はズッキーニとネギ。その横に大きなプランターがあったので、種を3つずつ植えました。
 
「何の花が咲くかなあ。」
「ほんまにかぼちゃやったらどうしよっか。」
「みんなで食べる?」
思い思いに話していました。
 
大きくなったらいいね、毎日お水やりをしながらお世話をすることにしましたよ。
 
ところが、なかなか芽が出ません。
確かにここに植えたのになあ
毎日お水やりをする度にプランターを隅々まで覗いて見ていましたが、それらしき葉っばはなかなか出てきませんでした。
 

 
「早く出てきて欲しいなあ」
「おーい出ておいで!」
と士に向かって言葉をかけるお友だちもいましたよ。
そうして2週間が経ち、5月も後半に差し掛かった頃、ようやく可愛らしい双葉が一つ出てきてくれました。やった一!
 
お水やりのお当番から帰ってきたHくんが
「芽がでてたで一!」
と嬉しそうにみんなに報告してくれます。
 
「どんなんやった?」
と聞かれると
「こんなん!」
と両手を双葉の形にして教えてくれました。
 
芽が出たのは1つだけでしたが、そこからはぐんぐんと大きくなっていきました。3つ4つと葉っぱが増えていくと、Sくんが何かに気が付きます。
 
「ほら、葉っばの形。ズッキーニと似てるでしょ。仲間なんだよ。」
じっとよく観察してみると、確かに葉のギザギザしたところや、触った時のざらざらした感触がよく似ています。
図鑑で調べてみると、確かにかぼちゃとズッキーニは同じウリ科カボチャ属。
形はきゅうりによく似ているからきゅうりの仲間だと思っていたお友だちもいました。
きゅうりもウリ科という所では仲間ではあるけれど、ズッキーニの方がより近しいものであることが分かりました。
 

 
ひかりぐみの中では『ひみつの種はかぼちゃ』説が濃厚になりました。
さて正解はなんでしょうか?
実がなったら分かるかな、楽しみな子どもたちです。
 
ぐんと気温が上がった6月。
もうすぐお泊まり保育です。
八瀬の保育センターに行くのを楽しみにしているひかりぐみのみんな。
 
「魔女さんに会ったらひみつの種のこと聞こう!」
「あれはかぼちゃですかって言うわ。」
 
手紙にあった『いつか会う時にどれくらいおおきくなったか教えてね』と書いてあったことをよく覚えていました。
ドキドキするけれど楽しみです!
 
しかしここでトラブルが発生しました。
Sくんが
「たいへんたいへん!」
と保育士の腕を引いてプランターの前まで誘導します。
「ちょっと見て!」
「うどん粉病にかかってるよ!」
指さす方を見ると、大きくなっていた葉に白い点々。
まさに粉をまぶしたように広がっていて、擦っても取れません。
 
「うどん粉病って何?」
傍にいたSちゃんが尋ねます。
 
「葉っばにうどん粉みたいな白い点々があるでしょ、これがどんどん広がって野菜が育たなくなっちゃうんだ~ !」
植物博士がみんなに解説してくれました。
 
これはどうしたらいいのかな?と話していると、うどん粉病の葉っばを取り除くことで他の葉に広がることを抑えられるそう。
広がる前に対処ができて良かったです。
 
そのころに小さな雌花ができてきていたので、生育不良になっては悲しいな、とみんなで他に変わった所がないかよく見て確認しました。
雌花の形を見ると、小さな丸い実がちょこんとついているのが分かります。
このまま大きくなったらいいなあ、と思っていたのですが、どうやらかぼちゃなら人工授粉が必要とのこと。
しかも午前中にする必要があるとのことで、なかなか奥が深いなあ と勉強になりました。
綿棒に花粉をつけてちょんちょん、と合っているのか不安になりつつも人工授粉を試してみました。
 
数日後、ちょっと大きくなった実を見て一安心。
うまくいったようです!
着実に大きくなっていく実はうっすらと縞模様があって、固さがありました。
 
「ほんまにかぼちゃやったなあ」
しみじみ話す子どもたち。
 
「だから言ったでしょ~」
と得意気な植物博士でした。
 
大きくなってくると濃い色になってきて、みんながよく見るかぼちゃの形になりました。
ごろん、と土の上に寝転がる実をそっと持ち上げてみると、ずっしりしています。
小さな種からこんなに立派な実ができるとは
 
地面に触れていた場所を見ると傷がついたように色が変わっていて、なんで! ?とみんなから驚きの声が。
どうやら同じ体勢のままだと光が当たらないからこうなってしまう様です。定期的に転がしてあげることにしました。
 
かぼちゃの実が大きくなるごとに
「何で食べようか」
というのが話題に上がります。
 
お味噌汁に入れる?おやつにしてみる?クッキーにする?混ぜご飯もいいかも!と様々なアイデアが浮かんでくるようでした。
給食の先生にも相談し、みんなで育てたかぼちゃ本来の味を楽しむ+みんなの好きな甘い味付けにするということで、きな粉とあんこをまぶす『いとこ煮』で食べることにしました。
収穫の日が待ち遠しいです。
 
しかしまたトラブルが発生しました。
もう少し大きくなるかな、と思って収穫を待っていた実が、ある時何者かに醤られていたのです。
 
虫かな 、カラスかな 、美味しい実だって他の動物もわかったんだね、と言いつつ、心の中ではこのままではみんなが食べる前にもっともっと食べられてしまうかもしれないことを心配していました。
それはダメだ!と少し早いですが収穫をすることに。
子どもたちに支えてもらいながらハサミで茎を切ります。
975グラムのかぼちゃが収穫されました!
 
収穫した実を給食室に預ける前に、みんなで触ったり持ったり、お顔と大きさを比べてみたり、色々な方法でかぼちゃに触れてみました。
小さな種がみんなのお顔くらいに大きくなったなんて、びっくりだね。
 
香りはどう?
「葉っぱの匂いがする!」
「かぼちゃの匂いや!」
えーほんと?とかわるがわる鼻を近づけてクンクン
叩いてみるとポンポン、いい音がします。
 
色々な角度からかぼちゃを感じることは今までそうなかったと思うので、みんなの笑顔に貴重な経験ができたなあ、と思いました。
 

 
給食室の先生にお願いしていた通り、おやつでいとこ煮を出してもらいました。
みんなが育てたかぼちゃの味はどう?
「おいしい!」
「いい匂いがする!」
「甘くておいしい~!」
「おかわりある~?」
みんな大満足のおやつでしたよ。
 
五感を通してかぼちゃの成長を感じる中で、子どもたちの心の動きがよく見えました。
常日頃から食卓に並ぶ野菜が、これだけの時間をかけて大きくなることを知り、人間と同じように病気になったり元気がなくなったりもすることに気づき、そして自分たちで手間暇をかけて育てたものがとても美味しいということにも気づき、子どもたちの世界がまた一つ広がった瞬間を目の当たりにできたことはとても幸運だったと感じます。
 




 
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